野村證券主催のセミナーで大前研一氏の話を初めて生で聴くことが出来ました。講演慣れしているだけあって、1時間半の講演をメモを一切見ることなく時間丁度に終わりました。さすがですね(当り前?)。
さて、その内容ですが、彼の最近の著作でも目にする新しい経済・社会「見えざる新大陸」)、具体的には中国やインドなどの新興国の台頭によって、いまや常態化した「ボーダーレス経済」、インターネットがつくり出した「サイバー経済」、そして、乗数的に富を創造する「マルチプル経済」について、具体的かつ最新の情報(+ユーモア)を取り混ぜた有意義なものでした。
ポイントは以下のとおりです。(多少、実際と異なっている点はご了承ください)
・日本は昨年とは別の国の様に金回りが良くなった。
・金は世界中でだぶついており、日本はもはやデフレではない。
・日本政府は、国民にいつまでもデフレであると思わせたい(超低金利で損をするのは預金者)。
・アメリカと新興国との間では、近年BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が進んでいる。特に、英語が堪能で理数系の分野で強いインドは要注目。
・そのインドでITの次に注目されるのは、医療分野。日本と異なり、欧米では医者と患者が遠隔地間でコミュニケーションをとることが認められており、医療分野のインドへのアウトソーシング(=欧米の雇用の減少)が進みつつある。メディカル・ツーリズムの動きもあり。
・(付加価値の低い)コールセンター業務は、インドではなくフィリピンが主要拠点となっている。
・中東のドバイは、最近ヨーロッパ旅行客の「ハイエンド」なリゾート地となっている。ホテル運営等を支えているのは実はインド人である。
・インドはインドそのものに足を踏み入れても、この国の本当の姿はわからない。
・中国については、一人っ子政策のツケが将来的には心配されるが、政策決 定とその実行の早さは、国の競争力を高めている。この点、インドは富を「分配」することが基本的なポリシーとなっていることが、これまで災いすることが多かったが、今の指導者は信頼感がある。
・中国と台湾は、表面的(政治的)には争っているが、経済的には中国が台湾に依存し、切っても切れない関係となっている。台湾人は、英語、日本語、中国語ができる。
・インド、台湾、トルコは3大親日国。アメリカの世界経済の地位は今後相対的に小さくなることが予想され、日本として、これらの国とうまくつきあっていく必要がある。
・日本はかつて対米進出で苦労したが、最新の調査では9割の日本企業がアメリカで黒字となっている。これは、ヨーロッパのどの国よりもアメリカで成功を収めたことになり、日本企業のグローバルな競争力が欧米の投資 家から再評価されたことが、最近の日本株の上昇の一因となっている。
・自分の会社を近く上場すべく、投資家回りをしてみた感想は、今の日本は15年前にそっくりの金余り。相当バブってきている。外人が売りに出たら、一緒に相場から退場しないとダメ。
・投資は、相場に一喜一憂しない様、投資する国、通貨、商品を分散させる必要あり。
・今の時代を生き延びるためには、世界経済の動向や、カルパース(カルフ ォルニア州公務員退職年金基金)やイギリスのファンドといった優れた投 資家の金の動き等をよくウォッチし、ひとりひとりがクレバーになることが、何よりも重要。ドバイ等機会があれば実際に見てほしい。
→日本だけでなく、世界に目を向ける必要性を改めて認識しました。
良い講演でした。講演料はいくらなんでしょうかねぇ。
P.S.その1
週刊ダイヤモンド別冊(2006/1/10号)に大前氏のコメントが載っていました。かなりセミナーの内容と重なる部分もあるので、関心がある方はこちらもどうぞ。
P.S.その2
AERA(2006/1/2-9合併号)に「インド医学の実力」との題でメディカル・ツーリズムに関する記事が掲載さていましたので、関心のある方はご覧ください。
このエントリーを面白いと思った貴方は
この本をぜひ読んでください。